西木屋町通
「彼方より」
昔読んだ小説が急に読みたくなり引っ張り出してくる。
「桜の森の満開の下」
原作ではなく森見登美彦氏の「新訳・走れメロス」収録の一篇である。
四畳半神話大系や夜は短し歩けよ乙女といったコミカルな作品はもちろん好きだが、「桜の森の~」やきつねのはなしといった妖しげでぞっとする作品の方が好きなのかもしれない。
(きつねのはなしだと「胴の長いけもの」が特に良い)
主人公が誰もいない桜の並木道に恐怖を覚える場面が何度か出てくる。
この光景がとても魅力的に思えるのである。
(小説では「誰もいない早朝のひととき、凍り付いたように咲き誇る満開の桜」などと表現されている。
私という人間が活気の溢れる賑わいよりも、耳鳴りがするほどの静寂を好むからであろう。
来年は誰もいない桜の下に立っていたいと思うのであった